ボルドー留学体験記(2018年フランス語スピーチコンテスト優勝者)
2018年6月にアンスティチュ・フランセ九州にて開催された第20回ボルドー・アキテーヌ福岡・九州 姉妹都市フランス語スピーチコンテストの優勝者、西南学院大学 山口奈美さんから、ボルドー留学体験レポートが届きましたのでご紹介します。2018年6月にアンスティチュ・フランセ九州にて開催された第20回ボルドー・アキテーヌ福岡・九州 姉妹都市フランス語スピーチコンテストの優勝者、西南学院大学 山口奈美さんから、ボルドー留学体験レポートが届きましたのでご紹介します。
こんにちは。山口奈美と申します。アンスティチュフランセ九州にて行われましたスピーチコンクールに出て、2018年8月末から1ヶ月間、福岡市の姉妹都市であるフランスのボルドー市に滞在するという貴重な機会を頂きました。滞在中の思い出のほんの一部をご紹介したいと思います。
1人で海外へ行くのは初めて。加えて乗り換えは盛り沢山だしボルドーに辿り着いてからも無事にホームステイ先に行けるのかな、という不安を抱えながら、でもそれより大きなわくわくを胸に、いざ福岡を出発しました。
5つの空港、3つのフライトを経る30時間を超える旅路で疲れた私を迎えてくれたのはRosierさん一家。おしゃべりでフレンドリーなお母さん、お庭仕事に日々打ち込むお父さん、そしてかわいい天使でいたずらっ子の娘さんの3人暮らしの温かいご家庭でした。お家に着いてすぐ、ビズというほっぺたを合わせてちゅっとするフランスお決まりの挨拶を交わした時に感じた安堵感は印象的で、今でも覚えています。
ここのお宅では私以外にも留学生を受け入れていて、着いて数分で早速アメリカ、ドイツ、スペインから来た留学生3人の友達ができてしまいました。毎日一緒に学校に通ったり出掛けたりと、とても仲良くしてもらいました。
一緒に過ごす中で、色々なことについて話しました。フランス語を学んできたからこそこんな風に彼女たちとお互いの意見を交換できているのか…外国語を学んでよかったな…としみじみ感じることも多々ありました。彼女たちとは今でもよくメッセージのやり取りをしています。
夕食は毎日、お父さん作のバルコニーでみんなで食べるのが日常でした。写真は以前ここにホームステイしていた男の子も迎えて一緒に過ごした日のものです。
今回特に楽しみにしていたのがホームステイでした。教科書で良く見てきた"the フランス文化"や、逆に教科書には出てこないフランス語が日常に沢山散らばっていて、それをへぇ〜と心の中でつぶやきながら少しずつ集めていくのがちょっとした楽しみでした。
家で一番よく聞いたフランス語は、学校に遅刻しそうな娘さんにお母さんが毎朝言っていた « Dépêche-toi ! Tu m’énerves !! »「急ぎなさい!もうほんっとにイライラさせるんだから!!」かもしれません。お母さんの言うところの「コメディー映画の一幕」のような嵐のような朝が今では恋しく思い出されます。
今まで知らなかったフランスの世界を垣間見ることが出来たのはやはりフランスの家族との時間があってこそでした。
平日は毎日語学学校で授業を受けました。私が通った学校は、大学付属ではないため大学生はほとんどおらず、年齢層は高め。今後のお仕事のため、また趣味として学んでいるという方ばかりで、みなさんがそれぞれの目標に向かってそれぞれのペースで取り組んでいる印象を受けました。
ヨーロッパの言語を母語に持つクラスメイトと一緒に受ける授業に難しさを感じながら、私は少し背伸びしたくらいのレベルのクラスで日々フランス語を学びました。少人数のクラスだったこと、またみんなが非常にオープンだったこともあり、ここでも沢山友人が出来ました。授業中でのディスカッションに加えて、彼らと話す中で得た考え方や経験はこれからも大事にしていきたいです。
午前中の授業を終えた後、午後は学校が用意している文化講座に出ることもしばしばありました。チーズ、チョコレートといったフランスの名産品から博物館・美術館見学、小旅行などまでありました。印象に残っているのはワインの講座です。さすがワインの本場ボルドー。その道のプロの方からとても詳しい説明をして頂きました。もちろんおいしいワインを試飲しながら。
授業は平日の午前中だけだし、よほど時間があるだろうと思っていた出発前の予想は良い意味で見事に裏切られ、毎日あっちに行ったりこっちに行ったり、忙しく、そしてあっという間に過ぎていきました。
9月末頃に、日本語を学ぶ学生と日本から来た留学生の親睦の場としてピクニックが催されました。ここに帰国間近の私が行くのはどうなのかなと少し躊躇しながらも、なにか使命感のようなものに後押しされ、小倉百人一首を持って一人で乗り込むことに。そう、今回私がボルドーに行けたのはこの百人一首を用いた「競技かるた」あってこそだったからです。
6月に行われたスピーチコンテストでは、私が大学で取り組んできたこの競技がきっかけとなりボルドー・福岡市間のまた違ったつながりが築けるのではないか、というそんな私の願いを聞いて頂きました。語学学校に通っていた私が日々出会うのは海外からの方が多かったので、このピクニックはかるたを少しでもボルドーの人に知ってもらえる最初で最後のチャンスでした。
100人は裕に超える人数が集まったその会で、たまたま近くにいた学生さんに札を見せてみたところ…「あー知ってる!これやってみたかったの」と言われたのです。びっくりしました。さらに驚くことに、その子と話しているうちに、他にもそういった学生さんがいることが分かりました。
フランス国内にはすでにいくつか「かるた会」というものが存在します。あと半年あればボルドーにもつくれたかもしれないな…などという私の勝手な妄想は、5日後に帰国という事実を前に儚く夢に終わってしまいましたが、かるたに興味を持つ人がここボルドーにも少なからずいるということが知れてとても嬉しかったです。少し重かったし場所も取ったけれど札をスーツケースに無理やり詰め込んできてよかったなと思った瞬間でした。
ボルドーで過ごした時間は言葉通りあっという間ではありましたが、振り返ったときに浮かぶ思い出の多さからも、この1か月が非常に濃くて有意義なものであったことが実感されます。今回貴重な機会を下さった皆様やボルドーで出会った全ての方々、支えてくださった方々には感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
今後もフランス語を通して自分にできることに取り組んでいきたいと思います。